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繰り返しになるが、俺は父がいないものと思っている。
実際には死んだわけでもないし、生まれた時から知らないというわけではないが、一般に多感な時期と言われる中学の頃から帰宅しないことが多くなり、高校の頃にあらぬ失態をしでかしたうえに蒸発したからだ。
まだ離婚をしておらず、居場所もわかってはいるが、10年位顔を合わせていないのが現状。
そもそも俺の父というのは、普通に家に居るときから、父親の役目というのを果たせていない気がしていた。
父親然としたところがあまり伝わってこなかった。
ただ単に自分の感情を人に伝えるのが苦手な人だったのだというには、無理があるほど何を考えているのかわからないところがあったと思う。
そうして育ってみると、俺には世間一般でいう「父親」というのがどんな男なのかわからない。
果たして自分が将来父親になれるのだろうかということにすら不安が残る。
だから、俺は未来に父親となることがあるのならば、こんな父親になりたい、などと想像することが多い。
わからないからよく考えるのだが、果たしてそれは、実践に基づいたものではないのは明らかで、大きな過ちが潜んでいるかもしれない。
なぜなら、俺には「あの時父親にこう言われて嫌だった」とか「悲しかった」とか「嬉しかった」とか「楽しかった」とかいった思い出がないのだから。
つまりは「傾向と対策」が皆無なのだ。
この本は、傑作だ。
こんな父子は良いなと思った。
作家の父は45歳、子は男の子で10歳。
母は27歳、妹は8歳だが、父は少年と、母は少女と別々に暮らしている。
子「これなあに?」
父「卵のマリブ風さ」
子「それはどういう料理なの?」
父「私がマリブで料理した卵さ」
この父の返答は、人を小バカにしたような受け答えだが、子の好奇心は尽きない。
子「なにが入ってるの?」
父「オリーブ油。オリーブ油はバターより安いし~以下略~」
~10/卵~
美術館にて
子「あの馬に乗っている人はだれ?」
父「だれかつまらん男さ」
子「こちらのつまらん男はだれ?」
父「考える人だ」
子「彼は何を考えてるの?」
父「自分のことさ。あらゆる考える人が考えることというのはそれなんだ」
子「彼の服はどこにあるの?」
父「うちさ」
子「彼がいるのはどこなの?」
父「そこさ。つまりアートの中さ。ロダンという人があの像を作った。とてもいいものだとされている。だけど最近はなにもかもあんまり悪いので、悲惨でさえなければそれはとてもいいということになるのさ。~中略~今ではちょっとしたいいことをすることすら、誰にもできないんだ。」
~36/扉~
父「~前略~と、同時に、私はまた、それらの詩に満足もしてないんだ」
子「どうして?」
父「もっとよくなるべきなんだ。今のままでも水準にはいってるよ、しかし、それじゃ駄目なんだ。並はずれてなきゃならんのだ」
子「でも、中には並はずれてるのもあるんでしょ?」
父「部分的にはね。でも一篇全体が並はずれてるのはないんだ。私が書きたいと思ってるのは全体が並はずれてるような詩なんだ」
子「いい方法があるよ、父さん、僕、絶対いいと思うんだ」
父「どういう方法だね?」
子「短い詩を書けばいいんだよ。すごく短いの」
父「非常によろしい」
~46/氷~
子「世の中の人たちって、どうしてあんなふうなんだろう(土地とか金を欲しがるんだろう)?」
父「さぁ、私には判らんが―しかし、世の中の人たちはそんなに悪くないよ」
子「あなたは人人が好き?」
父「人人が好き? とは何ということをいうのかね、私がその〈人人〉なんだよ。もし私が人を好きじゃないなら、私は全く生きる気がしないだろうよ」
子「Oh」
父「Ohは輪だよ」
~48/目~
難しい話がとてもユーモラスに変わる。
そして少年は素直。
物語の最初に、父は子に「小説を書け」とすすめる。
少年は書き方を知らないよと多少不満を抱きつつも、物語を書こうと努力し、色々なことに考えをめぐらせる。
そして逐一父に相談をし、父の考えを伺う。
この父は、少年の質問に必ず答えてやる。
答えに窮すれば、ヒントを与える。
あるいは、答えは一つではないのだという答えを与える。
それでも、綴りが苦手な少年は、考えるのにも疲れきり、小説を書くのをやめようとも言い出す〈というか本作品中少年はほんの一文すらも小説は書かない。
それでも、父の背中をデカイと感じた時こう言う。
子「僕帰ってきた」
子「僕はまた作家に戻ったんだよ、父さん。あなたはお料理の本と戯曲を書けばいい。僕は小説を書くよ。僕はどうやって書くか学ぶつもりだよ」
父「本当かね?」
子「神様に誓って本当だよ」
父「でも、どうしてなんだね?」
子「父さん、あなたわからないの? 僕もあなたと同じように作家である他ないんだよ」
父「なるほど―私は思うんだが―おそらく、この瞬間こそが私の人生の中の一番誇らしい瞬間なんだろうね」
~63/雨~
その後、彼らはちゃんと気付く。
人間の人生こそが一篇の小説だということを。
そして、残すに値する人生を生きることこそが、重要なのだ、と。
というまとめの本かな、と俺は思った。
こういう父になりたい。
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