楽しく楽しく…

果たしてそれだけでよいのか。
と度々思う。

答えは否だが、是な気がすることもある。

400m走のスタートラインに手をついた時や、前走者が第四コーナーを回ってホームストレートに入ってくる時、ライブ前の帰りたいという瞬間や、知らぬところで罵声を浴びせる時、ライブペイントの最中のネタ切れ、思いのほか持ち上がる自転車のフロントや、予想外に上手くいったマニュアル…。

そんな時に感じる「風(仮)」は何なのか。
背筋に走る悪寒や、鳥肌、膝の震えや、動悸、流れ出す汗。
脳みそを電気が走る感覚。
機能を停止する耳。
地面はゼリー状に変わり果て、スニーカーは飲み込まれる。

常にそんな状態であったとしたら、おそらく普通の生活は営めない。
そう思い当たるとき、否は是になる。
しかし、「風」の無い生活はやはり魅力に欠ける。

酒を飲むのも好きだし、女も、友人も好きだ。
仕事も楽しくやってるし、衣食住にも今のところ困っていない。
それでも「風」は至るところには無い。

瞑想や、ドラッグや、映画に「風」を感じる者もいるだろう。
洋服や、絵画や、人間関係・恋愛関係、仕事、金に「風」を見出す者もいるだろう。
犯罪や、殺し、虐待や、性に「風」を求める者もいるだろう。

俺はそんなんじゃない。
俺の「風」は売ってないし、嫌になるほどの下準備が必要になる。
そして、思いのままに願った時にすぐさま感じられるというものでもない。