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意外と毒の無い文章。
短編3編。
少年の成長記。
サラサラしている本。

いつまでも少年でいてどうするんだ、という声は聞こえはするが、小説を書こうとすると、何故か、いつも少年の心を書きたいと思ってしまう。少年に憧れ、自分の心の中の少年が命じるまま、毎日を生きているせいかもしれない。結局、オレにとっての小説は、生きていることの「おつり」以上のものではないのだろう。
~あとがきにかえてより~
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いつだって、自意識が最優先するのだ。自意識を傷付けるなら、肉体を傷付けたほうがましだ。それはほとんど本能的といっていいほどに俺の精神にすり込まれているものだ。
~3~

生きるうえでの最高の満足は、自己犠牲で自尊心を満たすことではないか。
~7~

自意識と自尊心にこだわる男。
空手の達人として外面の完成度を高めつつも、内面に影を持つ処女。
その性欲。
性的アンバランス。
その危うさ。
新興宗教・ヤクザ・麻薬の話。
そう書くとバイオレンスなハードボイルド系だが、根底には精神の動きが随所に織り込まれる。

しかし、最終的には、男は自らの欲望を頼みの綱とし、少女はそれを受けて覚醒する。
詰めが甘い様な気がした。

世の中で最も始末におえないものが、文学青年であり、その次に始末がわるいのが文学青年崩れである。
~1~

結局それを証明するような作品だった様な気がする。
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タイトルに惹かれて手に取ったが、中身は稀に見る愚作。

訳者中野圭二の名前をググってしまう位、悪い意味での衝撃を受けた。
慶応の教授らしいが、本作に関しては訳がゴミ。

俺は英語はさっぱり出来ないが、その文章は言ってみれば直訳のような不自然さが目立つ。
また、「Remember Perl Harbor」を『真珠湾を覚えておく』とするような訳も目立つ。
当然「『忘れるな』だろうが、ボケ」と思いながら読んでいたので、物語自体も詰まらないものに感じられ、読み進む速度は牛歩の如き低速になった。
上下巻でおそらく半年程度かかっていると思う。
無駄な時間を過ごさせられた本。

これがインテリの本だというなら諦めもするが、過度な性的描写や絵画を取り巻く悪漢が鼻を鳴らして動き回る物語なのだから、そんなことはないと思う。
楽しませるという意識に欠ける訳。

世間的評価は別にして、俺に合わない本なのは間違いない。
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不本意ながら年を越えてしまった本。
昨晩、半ば脅迫的に読み終えた。

恋愛小説。
短編10編。
多分、出来は悪くないんだけれど、それ程良いと感じなかった。

気がついたら隣にいたから、と好きになり、季節が変わったから、と愛が冷めたりしている。おそらくはこれが、20代から30代はじめの恋愛のリアルな姿なのだ。
~解説/香山リカ~

そんな気はした。
だからそれほど面白いと感じないし、小説的な上手くいき過ぎ感が鼻についたのかと思った。
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アルツハイマー患者を思う主人公。
患者の思考。

「自分がもう普通人ではないという自覚さえなくなる時が、何よりも恐ろしい」
~第5章スーサイド・ヒル~

「病識を失う」と言うらしい。
なるほどなどと思ってはいけない。
俺もあなたも何らかの病識を失っているからこそ生きているのだ、と思った。

葛藤し、自分自身を探しにかかる主人公殺し屋シュウの物語。

自分などというのは、何処かに落ちているものではなく、勿論誰が突然胸板に落とし込んでくれるものでもない。
自分に重ね易い物語。
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言葉より匂いを感じる。好きなものが善。嫌いなものは悪。邪魔なものは破壊する。
~8.それから~

「いいか? 暗闇は避けて通るんだ。一生避けて通るんだ。~以下略~」
~12.23時のハリネズミ~

だからせめてあの子は、毒に汚されぬようにと、僕は願った。
世界の歪みに飲み込まれてしまわぬようにと願った。
~13."1971"~

涙は涸れた。
涙が涸れ、歪んでいた景色も正しく見えた。
~15.かわいそうなミサのために~

人は自らを諦めたときに、他人を思いやる。
読んでいる途中、それが真実だという感覚があった。
自分のようになってはいけないとは、なんというエゴか。

そして、実際、人のことなんて直ぐに忘れる。

そういうことが正常であるならば、異常でもいい気がするというのは、否定しきれないでいる。

リセットボタンはいつも一人一人の中にある。
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「いい手紙じゃない。」
『読んだの?」
「違う、読んでる君の顔を見てた。」
~血と水~

うん。
良い、好もしい空気感。
そういえば、今日横で聞いていた彼の電話もすごく良かった。

嗚呼。
そういうことか、と何かを悟れそうだった。

大川端奇譚
とかげ
も良かった。

6つの短編は全体に似た色調で、2度登場人物の設定がごっちゃになって、数ページ戻って確認する必要があった。
全ての作品が、結婚をしている、或は結婚を考えに含めた男女の話だからだと思う。
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昨夜は三度目のランデヴーだった、私達の三度目の白夜だった。

白夜【びゃくや/はくや】
高緯度地方で、夏、太陽が地平線近くに沈んでいるために薄明が長時間続く現象。

恋に落ちたものが語らう時間、それは明るく光に満ちている。
それが例え、宇宙で最も暗い夜明け前であったとしても。
そういう意味での白夜だと思い、読み進んだ。

わずか数日の、密度の濃い、恋の物語。
結末までも、自分とだぶるから笑える。

また、時代についても感慨深い。
2008年の現在、こんな本を書いたところで何の話題にもならないだろうと思った。
この場合、重要だったのはスピード。

宇宙で最も暗い夜明け前
~パール/The Yellow Monkey~

スピードより重要なのは着地
~くちばしにチェリー/Ego-Wrappin’~
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P.23古典
古典の作者の幸福なる所以は兎に角彼等の死んでいることである。

我々の―或は諸君の幸福なる所以も兎に角彼等の死んでいることである。

他、P.35「地獄」も見物。
針の山や血の池と言っても、毎日が同じ様に苦痛なのであれば、その内慣れるものだが、生きているうちには何が襲ってくるかわかったものではない。
よって、地獄よりも日常の方が辛いのだ、と。

P.60親子
~略~

子供に対する母親の愛は最も利己心のない愛である。が、利己心のない愛は必ずしも子供の養育に最も適したものではない。この愛の子供に与える影響は―少なくとも影響の大半は暴君にするか、弱者にするかである。

P.68芸術
~略~

芸術も女と同じことである。最も美しく見える為には一時代の精神的雰囲気或は流行に包まれなければならぬ。

人間という生き物の矛盾を突いた文章の羅列。
後半は基督を知らないと読めない感じだったのでパスした。
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傑作二編。
16歳の想像力というものに感嘆。
艶っぽい描写。
少年の残酷さ。
作品の落ちどころの妙技。

清音が口ごもっても静枝は先を促さずにお茶を飲んで続きを待った。
~優子/三、隙間~

なんとなく、日本的だなと思った一文。
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昨夜は馬車道で何度となく転び、本自体を紛失した。
何箇所か抜粋しておきたい部分があったのだが、本がないので不可能になった。
読み終えたところで良かった。

読後感。
頭の良さが光るのはなぜだろうか。
文章が簡潔だとか、世界観が好きだとか、そういう文章的な存在感ではなく、頭が良さそうだという印象が色濃く残る作家。

時代や社会に置いてけぼりにされた家族の物語。
自分の周辺にいるそういう人物を思い描きつつ読み進んだ。
寂寞。
根暗な人におすすめ。

こういう本を書かないまでも、こういう思考を持った女が欲しいなと思った。
冬だ。
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殺伐。
そんな感じの本。
寝すぎで眠い日が続き、読み飛ばした感あり。

読む前は、なにかもっと教訓めいた物語かと思って手に取ったが、そうでもなかった。
兎に角一つの文章が長く、「―」が多く、目が行間を右往左往した。

ページを繰るタイミングが悪かった気もするので、忘れた頃にまた読んでみようと思う。
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十代の男性にとってセックスは気まぐれに降る砂漠の雨と同じだ。
~12~

セックスには鷹揚な方だと自分のことをそう思う。
だからかもしれないが、すんなりと読めた本だった。
性的描写の強い村上龍をあんまりだという友人がいるが、彼はこの本もなかなか読み進むことが出来ないかもしれない。
読みながら、何度かそんな考えが頭を過ぎった。

体を売るという、非合法な行為をしながらも、そこへ嵌り込む主人公。
女性とのセックスを通して、人間の欲望を垣間見る。

これだけの人間が生きていて、欲望の種類は無限にある。だけど、すべてはどこかで誰かが試した形のバリエーションにすぎない。~中略~それでも今この瞬間に、誰もが自分だけの欲望を生きている。そういう意味では、欲望に古いも新しいもないのかもしれない。
~18~

女性の欲望を描写したクダリだが、それは、人間全ての欲望に通じるところがある。
そして、その欲望はなにも我慢する必要がないと思う。
人のことを考えられない人間だと思われるかもしれないが、それは違う。
例えば、人に嫌われたくないという欲望。
それを達成するには、人当たりの良い人物になる必要がある。
人にこう思われたいという欲望の達成は、自分中心ではありえない。
なぜなら価値判断を下すのは他人だから。

石田衣良の本は「約束」に続き2冊目。
なかなか好感の持てる切り口の本を書く。
あくまで俺の主観だけれど。
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村上春樹を初めて読んだ。
簡単な言葉で複雑なストーリーを展開して、完結は簡潔な印象。
キャラクターのパンチはそんなに強くない。
何処にでもいそうな設定を与えられた人物が、それなりの行動をする一夜の物語。

大人になることの感化と、子供でいることを忘れないでいることの大切さの示唆の同居。

難解な部類に入る「世にも奇妙な物語」的な小説。

文章が読みづらかったという印象はないので、また機会があれば他の作品も手にとると思う。
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巻頭の「ガーデンニング」は中途半端な幕切れで拍子抜け。

妖精には隠すことのできない欠陥がある。
ニワトコの樹の精は、頭のうしろががらんどう。
グラシュティグは山羊の蹄を隠すため、緑の長いスカートを穿いている。
片足を引きずって踊るヘンキー。
鼻孔が片方だけのもの。
指が四本のもの。
水かきのついた足。
大きな前歯。
わたしのあの人は、薬指の銀の指輪を外せない。
~野薔薇の鉢~

冒頭の文章。
引き込まれた。

今朝、TKのニュースを見たからではなく、一つ歌詞を思い出した。

いつもは指輪を外していたのに どうして昨日は腕を組んでいたの
~Globe/Can't Stop Fallin'in Love~

指輪には、何か魔力めいたものがある。
束縛や諦めや拠所となり、人に作用する。
だから指輪は危険にもなり得る。
そんな気がする。

ざっと読み返しても、その他は特に引用するところもなかったけれど、短編集のタイトルにもなっている「血い花」「常緑樹のある部屋」「紋白蝶」は良かった。
子供じみた男が出てくるものが多い。
まるで、自分を見ているかのような。
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